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〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

ジョージ・オーウェルとウイリアム・トレヴァーの短編(英語3テキストより)その2

テキスト掲載の短編でもう一本のお気に入りは、アイルランド出身のウイリアムトレヴァーによる「中年の出会い」(A Meeting in Middle Age)である。こちらは、政治的な背景が見え隠れするオーウェルの「象を打つ」とはがらりと変わって、ある男女の一晩のドラマである。ストーリーは主に二人の会話で進んでいき、そしてその会話の合間に入る各自の回想シーンによって、主人公の二人の人物なりがわかる。

テキストの解説を見てみる。
「ダ・タンカ夫人とマイルソン氏という、二人の男女の出会いによる事件の枠組みの中で、読者は作中の彼らと共にクライマックスがいつくるのか、という緊張感に満ちた興味を持続させられる。しかし、二人の主要人物は眼前の出来事よりも、むしろ各自の意識の中で過去の出来事をたどることに忙しく、時間はそのために費やされていくようにも見える。二人は性差だけでなく、階級(上流と中流下層)、出身地(田舎と都会)などの点でも対照的である。(中略)不倫を描いた小説は数多いが、この作品の特異性は、それらとは逆に不倫という行為の不在を劇的なクライマックスに用いて、プロットを反転させることである。穏やかなアイロニー、哀感とユーモア、そして心理の襞に入り込む微妙な性格描写など、トレヴァーの特徴がよく現れている。」(英語3:p122)

短編とはいえ賞味20ページほどの文量はあり、また、外国語であるために、すぐに読めてしまうわけではない。それにもかかわらず、夢中になって読み進んでしまったのは、ドレヴァーの筆運びのうまさによるところが大きいだろう。

テキストによるトレヴァー評は以下のようになっていた。「短編小説の名手として定評があり、人々の会話を通じて心の動きを追いながら、意識の底に潜むものを浮かび上がらせ、意外な事実を明らかにする。」(p122)

本当に上手な書き手は、外国人をも楽しませるということか。