lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

体験型の歴史


お誕生日のお祝いをしていただきました。嬉しい♪(*^^*)

私の大学での専攻は歴史ではなかったけれど、文学部科目として歴史はいくつか取っています。入学後、夏スク時期を挟んで仕上げた思い出深い「歴史(西洋史)」に始まり、専門科目の西洋史やいわゆる中東エリアを対象とした東洋史もテキスト、スクーリングともに受けています。慶應の史学は難しいという評判通り、レポートにかなり苦戦した科目もありましたが、歴史は好きな科目の一つです。卒業した今は、評価のない、純粋な楽しみとして歴史に関わることができます。そんな中、面白そうなイベントが有ったので参加してきました。

「古代メソポタミア食事会」音食紀行さん主催。
大学入学前は、主として17ー18世紀あたりのフランスを中心とした西洋史に魅力を感じて関連本を読んでいたのですが、大学在学中に啓蒙されたなーと思えるのが、中東周辺の歴史です。現在ではいわゆるイスラムが中心となるエリアですが、そんなに深い知識がなくても十字軍遠征くらいは高校までに習っているし、歴史的に西洋と深い関連を持つエリアということがわかります。昨今、イスラムの名のもとで一握りの人々が起こしている恐ろしい事件から、中東って我々のような一般的な日本人には怖い印象しかないんですが、テキストやスクーリングでの講義で知る限り、歴史的にも文化的にも非常に魅力的なエリアなんじゃないかと思います。私自身はギリシャ神話が好きなこともあって、個人的には中東よりもう少し範囲を広げた、紀元前のギリシャ〜エジプト〜メソポタミアにより興味を惹かれるかな。いわゆる古代オリエントですね。


「世界の歴史まっぷ」さん(https://www.sekainorekisi.com/my_keywords/古代オリエント/)からお借りしました。

いつ頃どんなことがあって、街の様子はどんな感じで、人々はどんなことを考えてどんな生活をしていたのか、などは、現存する文献から知るしかないのですが、今回、当時の人々が食べていたものを再現されるイベントが有るということで、味覚を通して歴史を体験してみる試みに参加したのでした。中東ってイメージ的には広大な砂漠が広がる感じで、緑黄色野菜とかちゃんと食べれるんだろうか?などと勘ぐってしまうのですが、長い歴史の間に気候の変動があって現在に至るわけで、肥沃な三角地帯と呼ばれていたのだから、野菜もきちんと食べていたはず。そういえば、パセリ大量消費をググっていて知ったのだけど、レバノンにはパセリてんこ盛りのサラダがあるそうですしね。それはさておき、当日振る舞われた古代メソポタミアの食事を以下に見ていきたいと思います。


グラタン皿で焼かれたバッピルというビールが入ったパンと、その材料の説明をしていただいているところ。食べてみるとパン屋さんで売ってるブラウンブレッドの一種という感じで、個人的にはチーズとかのっけて食べたら美味しいんじゃないかなーと思いました。ビールの気配はあんまり感じなかったかな。



2品目のレンズ豆と入り麦の粥(リゾット)を大皿に取り分けていただきました。レンズ豆、大麦、ポロネギ、にんにく、玉ねぎ、鶏肉、赤ワインビネガーが入っているそうです。鶏肉が結構ごろっと入っていて、またお出しも出ていて、ほんとに美味しかった。バッピルとともにお皿に盛り付けて食べました。ピンク色のフレーバーウオーターはぶどう風味のお水という感じ、白いのはシェニーナという、ヨーグルトドリンク。飲むヨーグルトを薄めた感じです。食事もドリンクも全体的に薄味ですが美味しいと思いました。唯一、塩か出汁がもっとほしいと思ったのが、マグカップで提供されたカナシューというシチュー。現代人の「シチュー=とろみがあって具だくさんの煮込み料理」という概念を突き破って、さらさらのスープなのにシチューという。。。




そして、あっという間に4品目の食事、というかデザートということなんですが、メルスという焼き菓子のデモ&試食です。全体的に薄味のフードとドリンクの中で、この焼き菓子だけはガツンと濃い味という。ナッツ類やドライフルーツ、そしてなぜかにんにくが入っていて、クレープ生地のようなものに混ぜ込んで焼きます。当日、現代を生きる日本人に一番受けた食べ物でした。こういう焼き菓子が食べられていたということは、当時も鉄板とかフライパンみたいなものがあったのでしょうね。この日振る舞われた食事は当時食べられていたものの一部なのでしょうけど、特徴としては薄味で素材の味を活かしている感じがしました。我々が食事に気を使う一方で甘いケーキを楽しむように、当時の人々はメルスで癒されていたのかな?ぜひ関連文献(『最古の料理』ジャンボテロ、法政大学出版局、2003)を読んでみたいです。

実はアルコールも一杯だけ振る舞われて、私はハーブ漬けワインを選んだのですが、ハーブの風味がきつくてあまり美味しいとは思えず、一口だけ舐めて残してしまいました。(ごめんなさい。。。)なんでも紀元前3150年に製造されたコリアンダー、タイムなどの抗酸化作用を持つハーブが入っていたそう。アンチエイジングには良さそうな気はします。はちみつ漬けビールもあったのですが、そちらは味見していないのでどうだったのでしょう。お話を聞く限り、古代メソポタミアではワインよりビールのほうが主だったようです。

今回の体験は、個人的には食事会を通して5000年くらい前の中東エリアの人々と時空を超えて交流したような感覚でした。そして改めて、慶應通信で学んだ『西洋史特殊Ⅰー古代オリエント史』を読んでみました。再読してみると忘れていたことも再度、自分の中に飛び込んできて面白い。今回のような食事がなされていたメソポタミア文明の初期を築いたシュメール人とは、シュメール人という人種ではなくて、シュメール語を話す人々という、言語上のカテゴライズであったそう。そういえば、地理的な気質から、メソポタミアの人々は結構オープンであったようですし、人種を超えた交流が盛んだったのでしょうか。メソポタミア地域で採れない作物も交易とかでやり取りして、食していた可能性がありますね。もっと色々文献を読んでみたいです。