lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

ナポレオンと女性たち一考

近代社会の祖を創ったといわれる"ナポレオン・ボナパルト"。18世紀から19世紀を駆け足で生きたこの天才的軍人は、その業績もさることながら、これほど人間的な統治者は古代ローマ帝国カエサルボナパルトくらいではないか(自説♪)というくらいとても魅力ある人物だと思う。ナポレオンに関する書籍は何冊か読んだが、『ナポレオンを創った女たち』(安達正勝集英社新書)は、彼を掘り下げる視点がナポレオンに深く関係している女性たちという点がユニークで興味深い。同書によれば、強い男の代表みたいなイメージのあるナポレオン・ボナパルトが実際はナイーブな文学青年であり、また生涯その性質に翻弄されていたというから面白い。

"ナポレオン"という人物を、彼を取り囲む人間から掘り下げる場合に重要な人物として、母のマリア・レティツィア、二人の妻:ジョゼフィーヌハプスブルク家の皇女マリールイーズが出てくるが、この二人の妻については、ナポレオンとの相性というか、折り合いというかが完全に分かれるように見える。傍目から見れば、なんだか、ジョゼフィーヌとの結婚で上昇した運気がマリールイーズとの結婚でしぼんだように見えるのだ。極論だけれど、もし最初の結婚がジョゼフィーヌでなくマリールイーズであったならば、歴史に残る"英雄ナポレオン・ボナパルト"は存在しなかったのではないかとも思えてしまう。実際、ボナパルト自身が、コルシカ島の一介の貧乏貴族からヨーロッパの覇者にまで上り詰めたいくつかの要因の一つに"ジョゼフィーヌとの結婚"を挙げているのだ。

ジョゼフィーヌとともに築いた皇帝の地位を実子に継承させることを望み、ベスト・マッチであった妻と離婚してまでハプスブルクの皇女を迎え入れ儲けた息子のローマ王(ナポレオン2世)は、父とは死に別れ、母にも省みられず、わずか21歳の若さでこの世を去る。ところが皮肉なことに、実子を儲けることがかなわなかったジョゼフィーヌの実孫(先夫との娘とナポレオンの弟の子)がナポレオン3世としてフランスを治めることになるのである。人の世の儚さよ・・・いくら国を治めるほどの人物であっても何かしらの運命には逆らえないということか。
歴史を人間の営みとして見てみると、こんなに面白いドラマはないように思う。