lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

配偶者選択とオイディプス考

少し前の雑誌だが、「遺伝」(NTS, 2010年3月,p18-)に「配偶者選択と好みの文化伝達」という面白い記事を見つけた♪サイエンス系って各論をもっと細かくしたように細分化されているので面白みに欠けたりするけど、こういう総論的な一般科学記事は大好きっ(^o^)/〜
さて、内容ですが、動物の雄と雌のパートナー選びの実験と人間の配偶者選択の実験結果、及びそれについての考察で、鳥やグッピーの雌が惹かれる異性個体の話から、羊や山羊、そして勿論、人間の配偶者選びへと話が続いていく。巻末に載っていた以下の文献も引用されている。

"Sexual imprinting in human mate choice; Tamas Bereczkei etal., Proc. R. Soc. Lond. B, 271, 1129-1134(2004)

要するに、人間の好みは文化伝達される―自分の親と似た異性個体を好ましく思う傾向がある―という話である。ここで行われた実験によると、女性被験者が子供だったときの父親の顔写真と、彼女たちの夫の顔写真を比較すると、両者が似通っているという。性的刷り込み様効果(幼少時の学習が、後の配偶者選択に影響する)可能性もあるらしいが、ただ、親子は顔が似ているはずなので、「女性が自分と似た男性を選ぶために、副産物として、父親と夫との類似性が生じるのではないだろうか。」という説も。(遺伝:p22)ヒトを含め、生物とは総じて保守的なのだろうか。

読み進めるうちに、ギリシャ神話に出てくる悲劇の王の代表である「オイディプス」が頭に浮かんだ。神託により、「故郷に戻れば、実の父を殺し、実の母を犯すことになる」という恐ろしい予言を受け、それを避けるはずにとった行動によって、逆に、(知らずとはいえ)予言どおりに実の父を殺し、実の母をめとる。

フロイトエディプス・コンプレックスでも知られるこの物語は、なんだかこの配偶者選択と通じるものがある気がする。幼少時に刷り込まれたかすかなにおいや記憶によって、無意識に生みの母が理想の女性となり、その型にぴったりあうから恋におちた。前掲の「遺伝」記事の著者たちが日本人について行った実験でも、カップルは互いに顔が似ている傾向があるという結果がでたそうだ。

そういえば、英国留学中に、ある英婦人に、「ディビット・ベッカムとヴィクトリアは似てるでしょ。似てるから恋に落ちたのよ!あなたたちも自分と似た人を探したら良いわよ♪」と言われたこともありましたっけ。