lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

映画"Archipelago"


心に何かが残る…。

アベンジャーズシリーズで知った、トム・ヒドルストンという英国の俳優さんが最近気に入ってて、彼の他の出演作ってないのかなと思ってたら、"Archipelago"(邦題は「家族の波紋」)という作品を偶然見つけた。アベンジャーズのようなハリウッドのブロックバスターもののように、ドッカンドッカンと次々に何かが起こったりする映画じゃない、いわゆる私たちの日常を描いたような、とても静かに進んでいく作品。登場人物も少ない。けれど要所要所で誰かのキメの台詞ー人生観とか、心の奥底に抱えている想いとかーがでてくる。好きだなぁ〜こういうの。

ストーリー的には、英国の中産階級とみられる家族の2週間の休暇を描くというシンプルなもの。会話、食事、ピクニック、絵を描く、物思いに耽る…といったありふれたシーンで物語は淡々と進んでいき、その中で家族を形成する「個」の色々な想いなんかが表に出てくる。休暇に集う家族は母、姉(シンシア)、弟(エドワード:トムヒ)。それに休暇中の一家の食事を作る仕事で同居する若い女性、そして母と姉に絵の書き方を指導する画家。弟の彼女と一家の父親は、家族の話の中や電話(しかも声はわからない)のみでの出演だから、いわばこの5人のみで話は進んで行くことになる。仕事をやめて、そして1年半付き合っている彼女も置いて、アフリカに11ヶ月の予定で旅立とうとしている弟の迷い。気が強くて気難しく、素直でもない姉の家族への思い、(金銭的バックアップはあっただろうが)夫の支えなしに子供をそだてあげた母の気持ち。それぞれがいろんな想いを抱えていて、ついそれが口から出てしまうことがある。それと同時に、家族だからこそ口に出せないこと、そして踏み込んではいけない相手の人生も存在している。物語は、最終的になんの解決をみるとかなく、時間の流れに従って、休暇が終わることで完了する。

こういう作品をみると、自分の人生の様々な出来事と比較したり、重なったり、「そうそう、そうなんだよね」とか、「そういうことだったのかな?」とか色んなことが頭の中をぐるぐるする。私自身も子供の時からいろんな事に翻弄されて、そういう運命だったんだなと思うこともある。また、大人になってからであれば、あの時こうしていたらどうなっていたのかなと思うこともあったりするけど、実際に岐路に立った時には、自分が精神的に一番辛くない方を選んできたように思う。「あっちを選ぶよりもこっちへ行く方が辛くない」という感じで。だからちょうどこの話のエドのように、「これがホントに一番良い道なのか、正直全くわからない」と思うのはいつものこと。それでも誰かの言葉に左右されて道を選ぶことはなかったから、後悔だけはあまりない。というか、後悔しても仕方がない。選んだのは自分だから。人の一生で、これを選べば「生涯幸せ」っていう最上の道みたいなのはないだろう。多かれ少なかれ、持って生まれた宿命みたいなものに翻弄されながら生きて行くことになる。だからとにかく、その時点で他よりもちょっとだけベターと思われる選択をするしかない。そうすることで毎日の笑顔が増えるのであれば、それは幸せなのだと思う。

トムヒはジャガーのCMとか、悪役ぽいことよくしてるけど、インタビューとか見てる限りはこの作品のエドに近いのではないかと思ったりする。良い俳優さんだな〜。