lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

バイリンガリズム一考【英語7に関連して】〜終章

言語系統が近い欧州内の人々でさえ母語と英語との差異を感じているというのだから、ごく普通に日本の公立学校の教育を受けて育った私のような人間には、母語である日本語と英語の差異を感じないわけがない。一応文法も勉強しました、語彙もそれなりに増えてきましたという段階になってきても、表現について、「これってどうなんだろう?」って思ったり、単語によってはなんとも理解しがたい―英英での解説と英和の日本語訳の間にどうもしっくりしないものを感じる―ということも多々ある。

そんなことを思っていたころ、ある書籍を紹介された。『日本人の英語』及び『続・日本人の英語』(マーク・ピーターセン著、岩波新書)である。出て来る事例はもちろん限られるが、Amazonの書評を見ても多くの人が評価しているように英語を学ぶ際の副読本の"古典"といえるかもしれない。現在も明治大学の専任教員をされているピーターセン先生の語り口はとても面白く、するすると読める。私の場合、この本を読んで、英語ネイティブが助動詞で感情をあらわしているということ、現在完了形の持つ意味、冠詞の違いなどについて学んだといってもいいかもしれない。

最近では、去年か一昨年に購入した、『英語構文ニュアンス事典』(田中実編著、北星堂書店)が面白かった。非ネイティブから見たら、一見「同じじゃないの?」って思えるような英文のニュアンスの違い等が書かれている書籍である。たとえば、同書に以下のような例文がある。

(1)He kissed her cheek.
(2)He kissed her on the cheek.
上記の2つの例文のうち、「NYへ出張のため旅立つ際、彼女との別れ際に愛をこめて彼女をじっと見つめながら、頬にキスした」という状況を表すとしたら、(1)と(2)どちらになるのか?

答えは(2)。解説すると、(1)は彼の注意が彼女の身体の一部=ほおに向けられているだけなので、単なる儀礼的なあいさつということになり、(2)は、視線が身体全体に向けられてから頬に向かう、つまり、彼女をまじまじと見つめたうえで、頬にキスをするという意味になるそうだ。ひぇ〜!

プライベートでちょっとニュアンスが違ったくらいじゃまぁいいが、もしビジネス上の契約とかそういう話だったらとんでもないことになる。某元首相が大事な会議で、trust me!とか口走っちゃって大変なことになってましたもんね。