lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

バイリンガリズム一考【英語7に関連して】〜その2

そもそもバイリンガルの定義とは何だろうか。広辞苑を見ると「2言語を併用すること・人・国・地域」となっている。手元のコウビルド英英を見ると"Someone who is bilingual can speak two languages equally well, usually because they learned both languages as a child". このように、「バイリンガルであるということ」は、もちろん二つの言語を等しく上手に操れることが条件であるが、じゃあ客観的に「バイリンガルであること」を判断できる物差しは何かといったら考え込んでしまう。

「英語7」にもバイリンガル定義の議論があり、やはり、人によって考え方が違うことがわかる。原書の著者はオランダ人であり、書中に登場する"自身や子供のバイリンガル経験"についてヒアリングされる人々も、フランスやノルウェー等、西欧を主とする欧州内の民族である。客観的事実として、彼らの母語は言語系統樹的には英語と近縁である。ドイツ語のような英語と同じ系統樹に属するゲルマン語内はもちろん、フランス語やスペイン語のような、いわゆるロマンス語に属する言語でさえ、日本語より遥かに英語に近い。それなのに、母語と外国語(第二言語)との差異を感じているらしいのだ。

ヒアリングに登場する一人、英国在住のAngelicaの母語はドイツ語である。彼女は自分自身をバイリンガルと考えるかとの質問に、 "Well, I wouldn’t. I describe myself as very fluent in English, but not bilingual." と意外な答えが返ってくる。そして、"In fact, I don’t really know what bilingual means, because when I speak English, even after twenty years and all the studying I have done in this country and all the reading, I do not have the same feeling for the language that I have for German. I very often just use English words without having any of the association of feelings and experiences that I have when I use German words."
ヨーロッパ大陸に多いバイリンガルマルチリンガル達は、流ちょうにいくつかの言語を操り、それが普通なのだと思っていたが、Angelicaのコメントにはそのような姿は見られない。英語を勉強し、20年英国に住み、同じ系統樹内の母語を有していても、ドイツ語を話す時と英語を話すときの言葉への感情移入の仕方が異なるというのは、非常に新鮮な驚きであった。(余談だが、関西の方が東京に行って東京弁で話していても微妙に感情の入り方が異なるという話を思い出してしまった・・・σ(≧∇≦*))

一方、自分自身をバイリンガルであると堂々と主張する人もいる。ベルギーの仏語エリア出身のJanineは、"I consider myself to be bilingual, because I understand English jokes." ジョークを理解できるという観点から、自分はバイリンガルであるという。これは確かに重要な視点であるだろう。しかし、理解できるということと、面白いと感じることは別物のようだ。"Although I understand English jokes, I don’t always think they are funny."

このように見てくると、バイリンガルであるか否かということは、単に主観的なものなのだろうか?と思う。