lalala sunshine

〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

スキンシップと心

以前から興味があった心理学。夏スクで受講したのをきっかけに益々興味を持つようになった。折りしも最近は幼い子供への虐待事件が多発しており、子持ちの友人と久しぶりに会って話をしたりしたことで、親と子の関係について少し調べてみたくなった。手にしたのは以下の書籍である。『愛撫・人の心に触れる力』(山口創:NHKブックス)どうやらわれわれ哺乳類は、本能的に他者とのスキンシップなしに生きていくことができないようにできているらしい。

同書には、「生後間もないアカゲザルの死亡率を下げるために分娩直後に新生児を母親から離して飼育する実験」の話が出てくる。人間により十分な栄養素を与えられたにも関わらず子ザルの死亡率は下がらず、たとえ生き続けたにしても、問題行動を起こすことが多かったという。「母親から親密なスキンシップを受ける経験を剥奪された隔離飼育サルの特徴は、他個体に対する過度の恐怖や攻撃性の高さ、あるいは他者の表情の解読の困難さといった、社会性の異常がみられることであった」。つまり、栄養的に満たされても、触覚から得られる安心感がないと成長に異常をきたすらしい。

人間も同様で、母親とスキンシップをあまりしていない子供はよく泣き、かんしゃくを起こすことが多い、いわゆる情緒不安定の傾向があるようだ。発達心理学者のアシュレイ・モンタージュによれば、「人間は抱きしめられることによって、自分がこの世界から望まれた存在であることを確認できる。そして人間やこの世界に対する根本的な信頼感といったものは、幼児期にふんだんに与えられるスキンシップによって育てられる」という。結局、幼児期にどれだけスキンシップを受けたかという(無意識の)記憶は、将来にわたりその人の心に影響を及ぼし続けるということらしい。子供を虐待する親は、自身が子供時代に虐待を経験しており、「肌のふれあい=暴力」という刷り込みがあるようだし、ネグレクト(子供に情緒的に関わろうとしない)親は、温かいスキンシップの経験を持たないために母性が育っていないという。つまり、最近の虐待多発の傾向は、スキンシップ不足の顛末ということだろうか。

文化的にあまり他者に触れるという習慣を持たない我々日本人。子供のころのスキンシップを逃してしまったら大人になっても他者に触れるなんてありえなくなってしまうだろう。ラテン系の人々は挨拶がハグだったり、ほっぺにキスだったりして結構自分以外の他者に触れる機会が多いので、一生を通してスキンシップに事欠くことがなく、心理的に満たされる部分が我々より多いのかもしれないと思ってしまう今日この頃。(わたしは隠れラテンなのでハグしちゃうことありますけど・・・)