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〜慶應文学部を通信教育過程で卒業しました〜

ジョージ・オーウェルとウイリアム・トレヴァーの短編(英語3テキストより)その1

慶應通信の『英語3』テキストは2部構成になっており、1部に新聞記事や小説の導入部分等、2部に3つの短編作品が収められている。このテキストは全体的に読み応えがあってほんとに面白かったが、中でも2部に収められているジョージ・オーウェルの「象を撃つ」(Shooting an Elephant)とウイリアムトレヴァーの「中年の出会い」(A Meeting in Middle Age)が最高に面白かったので、これらについて少し書いてみたい。

"Shooting an Elephant" by George Orwell
大学入学前は実用書やエッセイを好んで読み、恥ずかしい話村上春樹の作品も読んだことがなかったから、当然のようにこの作家についても知らなかった。今回テキストを読んで、かなり偉大な方だということをしった。英国イートン校に学んだお坊ちゃまだが、大学に進まずにビルマ大英帝国警察に勤めたという。

英語3テキストには以下のような解説がある。「戦後、緊密な構成の寓意小説『動物農場』(Animal Farm, 1945)で独裁的な政治体制を痛烈に風刺し、大きな反響を呼んだ。さらに長編『一九八四年』(Nineteen Eighty-Four,1949)は、特権階級である官僚の支配による全体主義的な政治機構のもとで、個人の精神や意思が圧殺されていく恐怖を描写、当時、進歩的な知識人に未来社会のユートピアとして受け止められていた共産主義体制の内実を描いた、驚くべき想像力の産物で、歴史は作者の予見が正しかったことを示している」。(p111-112) 

翻って、本作については解説を読む前に作品を読んでしまったため、「ビルマ在住の白人警官が逃げてきた象を撃ち殺す」というだけの単純な物語に見えた。しかし、作品に出てくる象は巨大な政治機構を寓意しているということを知り再度読み返してみた。「象がゆっくりと倒れていく様子」を、19世紀にパクス・ブリタニカ(Pax Britannica)として栄えた大英帝国が傾いてゆくさまと重ね合わせると非常に興味深い。

オーウェルのものを見抜く力、そしてそれを表現する力はすごい。再びテキストを見ると次のような解説もある。「正義と平等への強い関心、誠実な人生態度、イギリス人らしい健全な常識で虚偽や欺瞞を見抜く力、そしてこれらを叙述する簡勁で直裁的な文体によって、今なお後進作家たちへの影響力を失っていない」。(p112)

私の中で、時間を作って他の作品をじっくりと読んでみたい作家のひとりとなった。

※ウイリアムトレヴァーについては後日記載予定